今回は、うつ病の症状のひとつである「今の状態を受け入れることができない苦しみ」を説明します。
うつ病の症状として、オーバーヒートした状態やエネルギー不足があることは、以前に説明しました。これらの症状は、「オーバーヒートしているから、ペースを落としなさい」「エネルギーが不足しているから、休養をしなさい」と、うつ病の人に訴えかけています。この時に素直にゆっくりできるといいのですが、うつ病の人はそれがなかなかできません。仕事に対しての責任感、自分に課したノルマ達成、周囲が求めている役割、自分の持っている理想像・・・それらに縛られて、休むことができないのです。
しかし、自分の持っているエネルギーでは、求めている水準にもっていくことができません。何度も疲れている 体に鞭打って、頑張ろうとするのですが、思ったような結果が出ません。この現実と理想のギャップを埋めようとしても埋められない、これが「今の状態を受け入れることができない苦しみ」です。
この苦しみの問題点は、もがけばもがくほどエネルギーを消費してしまうことです。自分としては何とか状況を変えようと頑張っているのに、エネルギーが減ることで、結果的にはより病状を悪化させることになります。このサイクルを繰り返すことが、うつ病を悪化させる悪循環となります。
一方、これらの状況を受け入れることができると、エネルギーの消費は少なくなります。ペースダウンや休養を受け入れるということは、「あきらめる」ということにもなります。頑張らなくてはいけないという気持ちを、あきらめるという方向に切り替えて、素直に休養を取ることができると、気持ちは楽になります。そしてエネルギーは回復に向かいます。
このことから、うつ病の初期治療として大事なことは、「今の状態を受け入れて、休養を取る」ということができるかどうかにかかってくるのです。