パニック障害は一般的に、「突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態」(厚生労働省ホームページ、こころの病気を知るより抜粋)と説明されています。そして同じような発作がまた起きてしまうのではないかという不安(予期不安)にうまく対処できないと、事態を長期化させてしまいます。ではどのように考えれば、うまく対処できるのでしょうか。
第1のポイントは、最初の発作は「突然理由なく」起こったと思われていますが、そうではないということです。最初の発作の日の状況を尋ねてみると、過重労働や非常にプレッシャーの大きい仕事を抱えている事が多々あります。パニック発作は、追い詰められた非日常的な状況で、自律神経のコントロールがうまくいかなくなり起こったものなのです。言い換えると、理由がないような普段の状況では発作は起こりづらいはずなのです。それを理由なく起こると考えるから、いつでも起こるように感じてしまうのです。
第2のポイントは、「発作が起こった状況と似た場面では、不安や恐怖を感じることは当然だ」ということです。危険な目にあった場所や状況を覚えておくことは、身を守るための手段です。そのため以前発作が起こったような場面では、危険を知らせるために、不安や身体症状がサインとして現れます。危険に関する記憶が、そうさせるのです(ただその記憶とは原始的なもので、その時は追い詰められていたから仕方ないというような理由までは覚えていません)。そこで電車の中で起こったとしたら、電車という場所が怖いと感じてしまうのです。ただしそれはとても自然な反応なのです。その自然な反応を、無理に閉じ込めようとする(不安や身体症状を無理に止めようとする)と、頭は混乱し、ますますパニックになってしまうのです。
これらの事から考えると、必要な対処は次のようになります。まずは、体調を整えて、落ち着いた状態(日常と同じ状態)を作ることです。そして、発生する不安を無理に止めようとせず、不安のあるままで行動をしていきます。怖く感じますが、何回も行動していけば、「大丈夫」という記憶が積み重ねていかれます。危険と感じていた状況を、安全だという記憶に塗り替えていくのです。そのためには、不安に立ち向かう行動が必要となります。その一歩を踏み出していくためには、薬物療法という手助けもあっていいと思います。ただし薬はあくまで不安を減らす目的であり、不安をなくそうとすると量が増えていく傾向があるので注意してください。