不安について②

前回は、不安や恐怖は本来必要なものであることを説明しました。しかし、実際はどうでしょう。むしろ不安が強くなりすぎて、立ちすくんで動けなくなることが問題になっています。どうしてこの様な事になるのでしょうか?

 

ではここでお化け屋敷を思い出してください。お化け屋敷に入るとわかっていながら、怖くなってしまうのはなぜでしょう?その理由は、不意を突かれるということ、暗くて良く見えないこと、よく知らない場所であることなどでしょう。お化け屋敷では自分の置かれている状況が理解できない中で、追い打ちをかけるように怖い体験が続き、不安な状態に不安が重なっていきます。多くの不安が重なって逃げてしまうと、逃げる方向しか見えなくなります。そのため追っかけてくるものを確認せず、自分で想像するようになります。

 

この時の想像は、不安な感情の影響を受けるので、実像以上にこわいものになります(この状況は、「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」という有名な句がうまく表現しています)。そして考えることを放棄してパニックになってしまいます。また動悸したり、体が思うように動かないことに気づき、自分の体でないようにも感じます。まさに心身共にコントロールできない状況となるのです。不安はコントロールできる状態であれば、危険を察知して対策を練るために役立ちます。一方コントロールを失うと、かえって自分に不利な状態になります。大事なのは、「自分がコントロールできる」ということです。

 

では、もう一度お化け屋敷について考えていきます。どうすればお化け屋敷は怖くなくなるでしょうか?何度も下見をして、照明を照らし、そして自分たちの数メートル先に先発隊を置けば、おそらく不意を突かれることもなく、恐怖感はかなり減るでしょう(全く面白くないでしょうが)。このように不安おばけを、しっかり見ようとする姿勢が必要です。怖いけど見てみようという意識は、状況をコントロールするための第一歩です。

 

不安に駆られてやみくもに逃げると、ますます不安をかきたてられ、コントロールを失ってしまいます。「今とりあえずできる事は何か」を探し出すことです。同じ逃げるとしても、どうやって逃げるのがいいのかを考える必要があります。冷静に考えるには、以前に説明した紙に書きだす方法などがいいでしょう。ただ最初に不意を突かれ、少しコントロールを失いかけたらどうしたらいいのでしょうか?次回は、コントロールを失いそうになったときの対処を考えていきます。