女性の場合、ホルモンの影響を受けて、うつ病とよく似た症状を起こすことがあります。代表的なものとして、月経のはじまる1週間くらい前から不快な症状が始まり、月経が始まれば嘘のように症状が消失する月経前症候群(PMS)という状態があります。
精神症状としては、自分ではコントロールできないような「イライラ」「怒りっぽい」といった症状が出現し、夫や恋人とのけんかに発展したり、子どもにきつく当りすぎたりすることがあります。
そしてこのような精神症状が影響して、安定した社会生活が送れないことから自信を無くしたり、月経前の行動を後悔したりすることから、慢性的にうつ状態に陥ってしまうことがあります。(例:①夫や恋人とケンカになったことでずっと落ち込んでしまう。②この時期うまく仕事ができないので、上司に信頼してもらえない③何回もイライラして問題が起こるので、自分に自信が持てない)
もしこのような症状が疑われるときは、まず今の状況を記録して観察することです。いつが不調の時期なのか、どんな症状がどのように表れるかがわかってきます。そうすると、診断の手助けになりますし、またその不調の時期をどうやりすごすか対策を立てやすくなります。
PMSに対しての治療としては、低用量ピル、抗うつ薬などもありますが、当院では漢方薬を使った治療を行っています。特によく使われるのが、今回紹介する加味逍遥散です。
加味逍遥散は、女性に良く使われる漢方の代表です。女性特有の症状であれば、とりあえず加味逍遥散というくらいです。更年期障害や月経困難、月経不順などに処方されますが、便秘や肩こりなどにも効果が出る事もあります。
動悸やめまい、のぼせといった自律神経失調症状にも有効です。長年うつ病という診断で、抗うつ薬や抗不安薬で治療していてなかなか治らなかった人が、漢方と低用量ピルで症状がなくなったケースを経験しています(低用量ピルすら必要ない人もいます)。女性でなかなかうつ病が治らない人は、一度月経と症状の関連があるかどうかをチェックしてみてはどうでしょうか。